『つみきのいえ』 加藤久仁生 監督
2008年 12分3秒
受賞 アヌシー・クリスタル賞
アカデミー短編アニメ賞
日本は昔からアニメが盛んですが、『つみきのいえ』は、2009年にアメリカのアカデミー短編アニメ賞を日本で初の受賞。
その後も、2017年現在まで受賞がないので、受賞するのは、とても難しいことだと感じる。日本の最高レベルの才能と技術を使った傑作アニメでないと受賞できない。
アニメは、平面的なセル画が多いですが、この作品は鉛筆のようなタッチで、絵の温かみをとても感じる。鑑賞して癒されるような作品は貴重。
その分、手間がとてもかかったでしょう。
加藤監督は、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒だけあって、絵をよく勉強している。
このような画風で長編アニメも作ると、国際映画祭で受賞できるような、素晴らしい作品ができると思います。しかし、手間とお金がものすごくかかる。
この作品も以前に書いた短編アニメの『岸辺のふたり』や『On Your Mark』と同じく、セリフ無しのサイレント映画なのも、お爺さんの淡々とした感じが出て良い。
地球温暖化による水面上昇で、家を積み木のように積み上げることは、現実には、まずあり得ないと思いますが、面白いアイデア。昔の西洋のバベルの塔を思い出した。
加藤監督は、「主人公である老人の生活を淡々と描くことで、人生というものを象徴的に表現しようと思った」
「見た人たちが、人生の中で大切にしているものや過ぎ去ってしまったものに対してどのような姿勢をとるのか考えるきっかけになる作品にしたかった」という。
人の家や家具には、人の思い出が染み込んでいる。
このお爺さんの人生の中で、妻と過ごした思い出が最も大切であった。お爺さんの子供の時から、妻が死ぬまでずっと妻と一緒に過ごしてきた。
この作品は、お爺さんが人生を回想した後に、ワインを2つのグラスに注いで、グラスをチンして終わるので、起承転結の結に当たる部分が、少し弱いと思う。
個人的には、お爺さんが人生を回想した後に、何かの行動があればよかった。
老人が過去の人生を振り返るが、時が過ぎてしまえば、貴重な人の一生もあっという間だと感じる。
過去を振り返ったとき、かけがえのない自分の人生が良いものであったと感じるように、日々努力しなければならないと思った。